ご挨拶



生体歯科補綴学分野 教授
インプラント治療部 部長
魚島 勝美
生体歯科補綴学分野は平成207月に発足しました。教育および臨床では冠・橋義歯補綴学、いわゆるクラウンブリッジを担当 し、旧第2補綴学講座の後を継ぐ形となっています。発足して間もない若い分野ですが、よろしくお願い いたします。

 歯学部教育においては3年生の歯形彫刻実習、4年生の 歯冠修復学講義実習欠損補綴学(ブリッジ)、5年生の総合模型実習を中心と し、その他にも生体材料学、統合科目としての口腔インプラント学、臨床予備実習(ポリクリ)などの一部を担当する他、6年生の臨床実習にもインストラクターを派遣しています。私は前職で教育を担当していたことか ら、長い間歯科医学教育の重要性とその改善方策について考えてきました。その結果、毎年1回開催される、全国歯学部学 生の英語による研究発表会(Student Clinician Research Program)への参加のお手伝いや、学生の海外派遣についても積極的に取り組んでおり、教室員も多くが これに参画しています。

 大学院教育においては、自ら考えて教育・臨床・研究を継続的に行うことができる人材を育成することを目標として、大学院修了後の活動への連携を含んだ訓練 の場を提供することを心がけています。現在本学大学院歯学系で進行している大学院教育の実質化の理念に則り、大学院学生諸君には可能な限り自力で研究・臨 床活動を行うことを推奨し、指導をしています。このことは、学生にとって決して楽な環境ではないことを意味しますが、将来的には必ずや花を開くものと確信 しています。また、広い視野を持つことは人間の幅を広げ、それが教育・臨床・研究に必ず生きるという信念に基づいて、当分野の教員、大学院学生は長短期留 学を含めて積極的に海外に派遣しています。毎週1回行っているジャーナルクラブ や輪読会では、英語の論文や成書に基づいて英語で討論をしています。

 臨床では、クラウンやブリッジを中心としながらも、インプラントを含む補綴治療全般を担当しています。機能回復を目的とする補綴治療は歯科治療の最終段階 で、これをいかに充実させるかは、歯科医療の質の良し悪しに直結します。診療所や歯科医院では対応が難しい患者様をはじめとして、全顎的な治療を必要とす る患者様はもちろん、一般的な数歯単位の治療といえども、当分野のスタッフによる治療の質は高いレベルにあるべきだとの考え方に基づいて日々治療を行って います。

 研究部門では従来手薄だった生物学的な側面から補綴学に関する課題を探求し、これを解明する研究をしています。具体的には本ホームページに詳しく記載して ありますのでご覧いただければ幸いです。生物学的基礎的な研究のみならず、臨床疫学の観点から、我々が提供する歯科治療の結果の検証をすることも始めてい ます。デンタルインプラントに関する機能的評価、客観的評価、主観的評価に関するデータを蓄積することによって、患者様のQOL向上は機能的改善のみでは不十分で、その社会的、心理的背景への配慮なしにはより高いレベル の医療提供は難しいことが分かってきていますし、今後は歯科金属アレルギーに関する治療とデータ収集によって、少しでも有効な治療方法を模索していこうと 考えています。

 現在の数少ないスタッフで上記の活動を継続することは決して容易ではありません。しかしながら、大学の存在意義を、あるいは補綴歯科学を専門とする分野の 存在意義を考える時、現状で困っている方に少しでも良い医療を提供し、活発な研究によって歯科医療を発展させ、人材を育成することなどによって社会に貢献 することは大学人の倫理に照らして当然のことだと考えています。今後も皆様のご指導・ご鞭撻をいただきながら、前進して参りたいと思っておりますので、よ ろしくご支援をお願いいたします。